行列にまつわる群

このページでは,行列が要素となるような群を紹介します.

正方行列全体のなす群

定義:$n$ 次正方行列全体のなす集合

実数を成分にもつ $n$ 次正方行列全体のなす集合を,${\rm M}(n,\mathbb{R})$ (他には ${\rm M}_n (\mathbb{R})$ など)とかく.

定理:$n$ 次正方行列全体は群をなす

$n$ 次正方行列全体は群をなす.

この定理は $n=2$ の場合の具体例でもって納得することにしましょう.

例:2次正方行列全体は群をなす

$n=2$ としましょう.例えば, $\begin{pmatrix} 1 & 2 \\ 0 & 1\end{pmatrix}$ は ${\rm M}(2,\mathbb{R})$ に属します.

演算を行列の加法 $+$ として,${\rm M}(2,\mathbb{R})$ は群をなします.

  • 大前提として,$+$ は ${\rm M}(2,\mathbb{R})$ で閉じています.すなわち,2次正方行列同士を足した結果も2次正方行列になっています.
  • 3つの2次正方行列 $A,B,C$に対して,結合法則 $(A+B)+C=A+(B+C)$ が成り立つことは,線形代数で学習するでしょう.
  • 単位元は 零行列 $O=\begin{pmatrix} 0 & 0 \\ 0 & 0\end{pmatrix}$ です.どのような行列に零行列を加えても,変わりません.
  • 行列 $A=\begin{pmatrix} a & b \\ c & d\end{pmatrix}$ の逆元は,$-A=\begin{pmatrix} -a & -b \\ -c & -d\end{pmatrix}$ です.$A+(-A)=(-A)+A=O$ であることはすぐに分かるでしょう.

同様に,3次行列全体,4次行列全体などもそれぞれ $+$ を演算として群をなします.

正則行列全体のなす群

定義:$n$ 次正則行列全体のなす集合

実数を成分にもつ $n$ 次正則行列全体のなす集合を,${\rm GL}(n,\mathbb{R})$ (他には ${\rm GL}_n (\mathbb{R})$ など)とかく.

正則行列とは,逆行列をもつ正方行列であったことを思い出しておきましょう.なお,${\rm GL}$という記号は,一般線形群 General Linear (Group) という言葉に由来します.

定理:$n$ 次正方行列全体は群をなす

$n$ 次正則行列全体 ${\rm GL}(n,\mathbb{R})$ は群をなす.この群を一般線形群という.

この定理も, $n=2$ の場合の具体例でもって納得することにしましょう.

例:2次正則行列全体は群をなす

$n=2$ としましょう.例えば,例えば, $\begin{pmatrix} 1 & 2 \\ 0 & 1\end{pmatrix}$ は その行列式が $1\times 1 – 2\times 0 =1$であることから正則行列であり,${\rm GL}(2,\mathbb{R})$ に属します.

今回は行列の積$\cdot$を演算として考えましょう.

  • 大前提として,$\cdot$ は ${\rm GL}(2,\mathbb{R})$ で閉じています.すなわち,2次正則行列同士を足した結果も2次正則行列になっています.
  • 3つの2次正則行列 $A,B,C$に対して,結合法則 $(AB)C=A(BC)$ が成り立つことは,線形代数で学習するでしょう.
  • 単位元は 単位行列 $E=\begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 1\end{pmatrix}$ です.どのような行列に単位行列を加えても,変わりません.
  • 行列 $A=\begin{pmatrix} a & b \\ c & d\end{pmatrix}$ の逆元は,逆行列そのもの,$A^{-1} =\displaystyle\frac{1}{ad-bc} \begin{pmatrix} d & -b \\ -c & a\end{pmatrix}$ です.$AA^{-1}=A^{-1}A=E$ であることは実際に計算すれば分かります.なお,$A^{-1}$がきちんと 今考えている群 ${\rm GL}(n,\mathbb{R})$ の中にあることも重要です.

同様に,3次行列全体,4次行列全体などもそれぞれ $+$ を演算として群をなします.

行列式が1の行列全体のなす群

定義:行列式が1の行列全体のなす集合

実数を成分にもつ $n$ 次正方行列で,行列式が1であるもの全体の集合を,${\rm SL}(n,\mathbb{R})$ (他には ${\rm SL}_n (\mathbb{R})$ など)とかく.

なお,${\rm SL}$という記号は,特殊線形群 Special Linear (Group) という言葉に由来します.

定理:$n$ 次正方行列全体は群をなす

${\rm SL}(n,\mathbb{R})$ は群をなす.この群を特殊線形群という.

この定理も, $n=2$ の場合の具体例でもって納得することにしましょう.

例:行列式が1の2次正方行列全体は群をなす

$n=2$ としましょう.例えば,例えば, $\begin{pmatrix} 1 & 2 \\ 0 & 1\end{pmatrix}$ は その行列式が $1\times 1 – 2\times 0 =1$であることから,${\rm SL}(2,\mathbb{R})$ に属します.

行列の積$\cdot$を演算として考えましょう.

  • 大前提として,$\cdot$ は ${\rm SL}(2,\mathbb{R})$ で閉じています.すなわち,行列式が1の行列同士をかけても行列式が1であることは,${\rm det}(A)\cdot {\rm det}(B) ={\rm det}(AB)$を用いることでわかります.
  • 3つの2次正則行列 $A,B,C$に対して,結合法則 $(AB)C=A(BC)$ が成り立つことは,正則行列と同様です.
  • 単位元も正則行列の場合と同様で,単位行列 $E=\begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 1\end{pmatrix}$ です.
  • 行列 $A=\begin{pmatrix} a & b \\ c & d\end{pmatrix}$ の逆元も,正則行列の場合と同様で,逆行列そのもの,$A^{-1} =\displaystyle\frac{1}{ad-bc} \begin{pmatrix} d & -b \\ -c & a\end{pmatrix}$ です.ここで注意すべきなのは,逆行列も${\rm SL}(2,\mathbb{R})$に属する,すなわち行列式が1であることです.

直交行列のなす群

定義:$n$ 次直交行列全体のなす集合

実数を成分にもつ $n$ 次直交行列全体のなす集合を,${\rm O}(n,\mathbb{R})$ (他には ${\rm O}_n (\mathbb{R})$ など)とかく.

直交行列とは,$ AA^{\rm T}=A^{\rm T}A=E$ を満たす行列 $A$ のことでした.なお,${\rm O}$ という記号は,直交 orthogonal からきています.

定理:$n$ 次直交行列全体は群をなす

${\rm O}(n,\mathbb{R})$ は群をなす.この群を直交群という.

この定理も, $n=2$ の場合の具体例でもって納得することにしましょう.

例:行列式が1の2次正方行列全体は群をなす

$n=2$ としましょう.例えば,例えば, $\begin{pmatrix} \cos 30^\circ & – \sin 30^\circ \\ \sin 30^\circ & \cos 30^\circ\end{pmatrix}$ は${\rm O}(2,\mathbb{R})$ に属します.

行列の積$\cdot$を演算として考えましょう.

  • 大前提として,$\cdot$ は ${\rm O}(2,\mathbb{R})$ で閉じています.実際, $ AA^{\rm T}=A^{\rm T}A=E$ および $ BB^{\rm T}=B^{\rm T}B=E$ を満たす二つの直交行列 $A,B$をとると,
    \[AB(AB)^{\rm T}=ABB^{\rm T}A^{\rm T}=AEA^{\rm T}=AA^{\rm T}=E\] となるので,積 $AB$ も直交行列です.
  • 3つの2次正則行列 $A,B,C$に対して,結合法則 $(AB)C=A(BC)$ が成り立つことは,正則行列と同様です.
  • 単位元も正則行列の場合と同様で,単位行列 $E=\begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 1\end{pmatrix}$ です.これは ${\rm O}(2,\mathbb{R})$ の元です.
  • 直交行列 $A$ の逆元も,正則行列の場合と同様で,逆行列そのもの,$A^{-1}$ です.ここで注意すべきなのは,逆行列も${\rm O}(2,\mathbb{R})$に属する,すなわち直交行列であることです.実際,
    \[ A^{-1}(A^{-1})^{\rm T}=A^{-1}(A^{\rm T})^{-1}=(A^{\rm T} A)^{-1} = E^{-1}=E\] です.

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です